小耳症とは、先天性に耳介(外耳)の形成が不全となる疾患です。耳介が小さい・変形している・欠損しているといった状態が見られ、多くの場合、外耳道の閉鎖(難聴)を伴います。また耳介だけでなく、顎の骨の形成不全や顔面神経の麻痺を伴うこともあり、総合的な治療計画が必要です。
小耳症では、成長段階や症状に応じて治療方針を検討します。当院では、竹市夢二医師が小耳症の診療を行っています。
Microtia Clinic
先天性の耳介の形成不全(小耳症)について診療しています。
耳介や周囲組織の状態、年齢、症状を確認したうえで、治療方針をご説明します。
What is Microtia
小耳症とは、先天性に耳介(外耳)の形成が不全となる疾患です。耳介が小さい・変形している・欠損しているといった状態が見られ、多くの場合、外耳道の閉鎖(難聴)を伴います。また耳介だけでなく、顎の骨の形成不全や顔面神経の麻痺を伴うこともあり、総合的な治療計画が必要です。
小耳症では、成長段階や症状に応じて治療方針を検討します。当院では、竹市夢二医師が小耳症の診療を行っています。
Classification
耳の正常な形がかなり残っているもの。耳介のひだの一部(対耳輪)が欠損し全体的に健常側と比べ小さくなっています。外耳道は閉鎖しています。
耳の形が一部残っているもの。耳介の上半分が欠損しています。耳の穴の入り口(耳甲介窩)が小さくなっています。外耳道は閉鎖しています。
単に皮膚と軟骨が残っているのみで耳の形を成していないもの。ピーナッツ型といい、一番多く見られるタイプです。
耳介を欠くものです。顔の頬の骨の一部も欠損しており、耳介がほとんど残存していない状態です。
掲載画像は、小耳症の分類を説明するための参考画像です。個別の診断や治療方法は、診察時に状態を確認したうえでご説明します。
Symptoms
小耳症の症状としては主に以下のものがあります。
A. 耳介が小さい。
B. 耳の穴(外耳道)が閉鎖している。
そのため空気を通しての音の伝達ができず耳の聞こえが悪い(難聴)。
C. 顔の骨の低形成。
耳が小さい側の上あごと下あごの骨が小さくなります。
胎児が母親のおなかの中にいるとき、耳介やあごはちょうど魚のえらに当たる第1鰓弓と第2鰓弓という部分が癒合して形成されます。小耳症はこの第1鰓弓と第2鰓弓の癒合に何らかの障害が生じておこるものと考えられています。顔の骨の発育が悪かったり、中耳の音を伝える部分が欠損したりするのも、発生の基となる部分が同一だからです。
そのほか比較的よくみられる症状としては、顔の表情を作る神経(顔面神経)の動きが弱く、眉毛や口の位置が片方だけ下がっていたり眼瞼がきちんと閉じなかったりすることがあります。他の先天的な病気と合併することも時々あり、耳だけでなく心臓など全身のチェックをする必要があります。
Frequency
欧米では小耳症の発生頻度は12,500人に1人という報告から7,000〜8,000人に1人というデータまで報告されています。人種によって差があり、日本ではこの数字よりやや多く発生するのではないかといわれています。右側の発生がやや多いですが、両方の耳に症状がでる人も10%程度あります。男女比では男性にやや多く発生します。
小耳症の人の次の世代がどのくらいの頻度で小耳症になるかは家族にとって気になる問題です。現在言われているのは数%という数字です。小耳症自体は決して致命的な疾病ではありませんし、数%の発生率ということは逆に言えば90%以上は大丈夫ということです。
Treatment
小耳症の治療方法には、耳介再建術やエピテーゼ(人工耳介)などがあります。手術の適応や方法は、耳介や周囲組織の状態、年齢、症状などを確認したうえで検討します。
手術治療は16世紀以来様々な術式が試みられてきました。現在の方法は1958年にConverseが、1959年にはTanzerが発表した肋軟骨を3本使用する方法に基づいています。
当院では、Tissue expander(組織拡張器)を皮下に挿入し、数ヶ月かけて側頭部の皮膚を拡張したうえで耳介を再建する方法を行っています。肋軟骨を用いる手術を含め、治療内容や期間は状態によって異なります。
耳介再建術には複数の方法があります。当院では、組織拡張器を用いて側頭部の皮膚を拡張し、肋軟骨で作製したフレームを覆う方法を行っています。
治療方法にはそれぞれ特徴があり、必要となる手術や通院の回数、治療期間、主なリスクも異なります。診察時に状態を確認し、適応となる治療方法をご説明します。
Insurance Coverage
小耳症に対する診療のうち、健康保険の対象となる治療があります。治療内容によって取り扱いが異なるため、診察時にご説明します。
耳介再建術に伴うレーザー脱毛は自由診療です。費用は1回につき5,500円で、必要な回数には個人差があります。複数回の施術が必要となる場合があります。
レーザー脱毛の主なリスクとして、赤み、腫れ、痛み、やけど、毛嚢炎、色素沈着、色素脱失などが生じる可能性があります。
自由診療に該当する治療をご案内する場合は、保険診療とは分けて、内容、費用、主なリスク等をご説明します。
Risks
手術内容により異なりますが、感染、出血、血腫、創部離開、皮膚壊死、瘢痕、左右差、変形、知覚の変化、採取部の痛みや傷あと、再手術を要する可能性などがあります。
具体的な治療内容、治療期間、通院回数、費用、主なリスクについては、診察時に状態を確認したうえでご説明します。
Optimal Timing
通常造られた耳は成長しないので、子供でも大人の大きさの耳を造ります。ですから大人の耳が作製可能な体の大きさになるまで待つ必要があります。またあまり小さいときに手術すると成長に伴い耳の位置が変わってくる可能性がありますし、小さな体から大人の耳に必要な軟骨を採取するのは負担になります。
一方、軟骨の硬さは年齢を経るごとに増し曲げにくくなるので、柔らかな曲線を持つ耳介が形成されにくくなってきます。この二つの要素を考えた妥協点が10才前後の年齢です。個人差がありますので大体の目安ですが、小学校4年から5年生の間に行うのが一般的です。これくらいの年齢になると自分でも治そうという意欲が出てくるので、複雑な治療もできるようになります。
Related Treatment
小耳症は単に耳が小さい(あるいは欠損する)だけでなく、耳の穴がふさがり聴力低下があったり、顔面が小耳症の側だけ小さくなったり、顔を動かす顔面神経が麻痺して眉毛が下がり目の開き方に左右差が出たりと、多彩な症状を示します。これらは、小耳症がもともと胎生期における第一第二鰓弓の発達障害に起因するからです。
症状や成長段階を確認し、必要となる治療や時期を検討します。
小耳症の症状や状態に応じて検討する治療には、以下のものがあります。
1)耳介形成 2)顔面骨形成 3)外耳道形成 4)顔面神経麻痺形成
耳介形成の開始時期や、そのほかの治療の適応と時期は、症状、成長段階、検査結果などにより異なります。診察時に状態を確認したうえでご説明します。
図1.小耳症治療のタイムスケジュールの一例。治療の適応と時期は、症状、成長段階、検査結果などにより異なります。
ここでは、耳垂型(ピーナッツ型ともいいます)について述べます。耳介形成では、側頭部の頭皮下にシリコン製の組織拡張器を挿入します。状態に応じて、残存する軟骨や皮膚を用いて耳珠や耳甲介窩を形成します。
耳介を形成する部位のレーザー脱毛を行い、組織拡張器へ生理食塩水を注入して皮膚を徐々に拡張します。レーザー脱毛は自由診療で、費用は1回につき5,500円です。必要な回数には個人差があります。
その後、肋軟骨を採取して耳介フレームを作製します。必要に応じて、反対側の耳介の三次元データから作製した鏡像モデルを参考にします。治療時期や手術内容は、状態に応じて検討します。
図2.頭皮下に挿入するシリコン製のバルーン(組織拡張器=Tissue Expander)。小さなドーム状の部分を頭頂部皮下に留置し、そこを細い針で刺して生理食塩水を注入してバルーンを拡張する。何回も刺入可能。乳房再建に用いる組織拡張器と基本構造は同じである。
図3.耳甲介窩(外耳道の入り口)の形成。耳垂型(ピーナッツ型=Ⅲ度小耳症)では遺残耳垂の軟骨の向きを変えて耳珠(耳の穴の前のふくらみ)を形成し、遺残耳介の皮膚は反転して耳甲介窩の陥凹部にする。この結果、耳垂型であっても耳甲介型(Ⅱ度小耳症)に近い形態となる。
図4.耳垂型(ピーナッツ型=Ⅲ度小耳症)。側頭部にシリコン製バルーンを挿入して同部を拡張。さらに脱毛も行い、拡張した皮膚を下方に移動して耳介を形成する。
図5.耳垂型症例の肋軟骨フレーム(左)。右は正常側(右耳)の鏡像モデル(3Dプリンター製)。鏡像モデルを参考にして肋軟骨フレームを作製します。
図6.側頭部の皮膚をレーザー脱毛した後、耳介再建部に移動する。肋軟骨フレームを挿入した後、陰圧をかけて皮膚をフレームに真空吸着する。作製した三次元耳介モデルと比較しながら、細かく耳介の傾きや立ち具合を調整する。
小耳症は単に耳のみが小さくなるだけでなく、周辺の顔も小さくなります。これは耳介や顔面が胎生期に第一鰓弓・第二鰓弓という原基から造られるからです。顔が極端に小さい場合は、顔を大きくする、あるいは小さいほうに合わせて大きいほうを縮め左右対称にする手術を行います。
この顔面骨半側低形成では、骨だけでなく、筋肉や脂肪などの軟部組織にも左右差がみられることがあります。状態に応じて、顔面骨の骨切りや仮骨延長術を検討します。
軟部組織の左右差に対しては、状態に応じて脂肪移植を行う場合があります。当院では、医学的に必要と判断した場合に保険診療の範囲内で行っています。具体的な治療内容は、診察や検査の結果を踏まえてご説明します。
図7.下顎を矢状骨切りして、縦方向だけでなく横方向にも仮骨延長する(左)。右図赤部分は仮骨延長部で、縦方向に骨延長されているだけでなく横方向にも骨量が増大していることがわかる。
図8.咬合平面と水平面の角度を基に骨切りの角度を決定する(左)。歯根をよけて骨切りするため複雑な骨切り線となるので、CADCAMを利用して三次元テンプレートを作製して、それに合わせて骨切りを行う(右)。
小耳症では外耳道閉鎖を伴うことも稀ではありません。そのような方の大半は外耳道が骨で閉鎖しており、鼓膜も消失している状態です。しかしながら内耳の部分は発生の違いから温存されています。そのため骨を伝わって聴こえる骨導聴力は正常であることが大半です。
聴力の状態は個人により異なります。必要に応じて検査を行い、補聴器の使用や手術の適応について検討します。
外耳道形成術では、状態に応じて浅側頭動脈皮弁を用いる場合があります。具体的な治療方法、期待される変化、主なリスクについては診察時にご説明します。
図9.浅側頭動脈と伴走する静脈で栄養される細長い皮弁をらせん状にすることで管腔を形成して外耳道とする。
図10.浅側頭動脈を利用したSSS皮弁の概要。外耳道を形成する部位の毛髪は、術前にレーザー脱毛を行います。
図11.浅側頭動脈に沿って術前にレーザー脱毛(左)。皮弁挙上時(中)。耳介後面切開より皮弁をらせん状にして挿入し外耳道の管腔を形成。レーザー脱毛は自由診療で、費用は1回につき5,500円です。必要な回数には個人差があります。
小耳症には顔面神経麻痺が併発することがあります。多くは全く動かない完全麻痺ではなくて、動きが弱い不全麻痺です。そのため出生直後には気づかれないことが多いようです。この場合成長にしたがって表情筋が発達してきて初めて気が付かれます。部位としては側頭枝が最も多く、頬枝や他部位のこともあります。
側頭枝麻痺の場合、眉毛の挙上が弱かったり、眉が下がることで目の開き方が麻痺側で小さかったりします。この場合は眉毛を吊り上げる手術を検討します。下顎縁枝の不全麻痺で頤の収縮に左右差がある場合には、正常側にボトックスを注射することもあります。当院では、医学的に必要と判断した場合に保険診療の範囲内で行っています。
必要となる検査や治療の時期は、症状や成長段階によって異なります。診察時に状態を確認し、今後の方針をご説明します。
Award & Research
竹市夢二医師は、小耳症治療に関する学術活動を行っています。2017年には、THE INTERNATIONAL SOCIETY FOR COMPUTER AIDED SURGERYのISCAS AWARD Winners 2017に選出されました。
受賞に関する情報は、下記の外部サイトでご確認いただけます。
Medical Reviewer
日本専門医機構認定 形成外科専門医、医学博士。日本形成外科学会所属。
名古屋市立大学医学部卒。元 愛知医科大学形成外科 准教授、若葉病院 小耳症センター長を歴任。
小耳症の治療は、出生後から長期にわたる計画的なサポートが重要です。
まずは竹市医師による小耳症外来にご相談ください。